伊豆ロマネスク狛犬

@伊豆市横瀬八幡神社のロマネスク狛犬


伊豆市の神社には伊豆石で作られたロマネスクな狛犬がいる。
(※ロマネスク狛犬とは私だけが勝手に命名してるだけだが。)
一応口の開き具合が異なっていることから一対の阿吽の像として作られたものと思われる。

向かって左のこちらが吽らしい。両目が離れている。
こちら右側は阿らしい。目は正面についている。

二つの像は互いに向き合って配置されているが、困ったように睨む阿に飽きたのか、吽のほうだけ少し首を左側の参拝者のほうに向けている。何故両方とも向くなら向く、両方とも向かないなら向かないとしなかったのか理解に苦しむ。
神殿を中心としたシンメトリーワールドが支配する境内で、その配置をわずかに崩すのは、かなり高度な、勇気のいる芸術的構図といえる。しかもこの狛犬の後ろ足からは見事なまでにそんな勇気が感じられない。



 
両神社の位置
・横瀬八幡神社 静岡県伊豆市修善寺307
・天城神社 静岡県伊豆市湯ヶ島305


ロマネスクは10〜12世紀のヨーロッパ中世建築美術様式。
まだ人体解剖学も遠近法も発明されてない時代の具象装飾。
伊豆市の狛犬はそんなロマネスク時代の素朴でユーモラスな
雰囲気を彷彿とさせる



磔刑のキリストも周りの人物も楽しそうな浮遊感は
シャガール風


天国と地獄の浮き彫り。天国の整然とした静的描写に比べ
地獄の描写は動的であり混乱を表している。

神社の縁起に寄れば伊豆市天城神社も江戸時代まで八幡神社として祭られていたが、明治の合祀後八幡神社リストから外された。
2015年現在は神主も不在のようで、裏山の倒木も荒れ放題なのが残念だ。八幡神社では皇室の祖神として応神天皇が付会されているが、この応神天皇は、3世紀伊豆で作られた枯野(軽野)という名の巨大古代船の名を後世に残せないものかと自ら歌に詠んでいる。
(日本書紀 応神天皇5年10月)。伊豆市には狩野という地名も残っておりその中に軽野神社という名残も残す。
伊豆の巨木で作られた10丈もの古代船が狩野川を渡って関西に出航されたのかもしれない。
伊豆市内の八幡神社はこの横瀬の他、小土肥にもある。もしかしたらこの石工の作品が八幡信仰に沿って奉納されているかもしれないと密かに期待したのだが、どうやらそっちは名工石田半兵衛が仕事を残しているらしい。

もし日本にロマネスク美術館ができたら、そこに伊豆市の狛犬たちが間違って展示されても、違和感がない。

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