伊豆ロマネスク狛犬

横瀬八幡神社と天城神社にいるロマネスクな狛犬たち

2013.5.3

@横瀬八幡神社

修善寺駅から狩野川にかかる赤い修善寺橋橋を過ぎ修善寺温泉方面に向かうとすぐ右手に建つ神社がある。ここにロマネスクな狛犬たちがいる。”ロマネスク狛犬”とは私だけが勝手に命名してるだけだが。
一応口の開き具合が異なっていることから一対の阿吽の像として作られたものと思われる。
向かって左のこちらが吽らしい。両目が離れている。

こちら右側は阿らしい。目は正面についている。

二つの像は互いに向き合って配置されているが、困ったように睨む阿に飽きたのか、吽のほうだけ少し首を左側の参拝者のほうに向けている。何故両方とも向くなら向く、両方とも向かないなら向かないとしなかったのか理解に苦しむ。
神殿を中心としたシンメトリーワールドが支配する境内で、その配置をわずかに崩すのは、かなり高度な、勇気のいる芸術的構図といえる。しかもこの狛犬の後ろ足からは見事なまでにそんな勇気が感じられない。

A天城神社

こちらの狛犬は完全に口が閉じられずにいるが阿吽の吽だろうか。

神社の縁起に寄れば伊豆市天城神社も江戸時代まで八幡神社として祭られていたが、明治の合祀後八幡神社リストから外された。
現在は神主も不在のようで、裏山の倒木も荒れ放題なのが残念だ。



こちらは阿だろうか。口呼吸してるようにしか見えない。もはや階段を登ってくる参拝客が来ても興味を示さない陰のある狛犬の背中は温かい。

八幡神社では皇室の祖神として応神天皇が付会されているが、この応神天皇は、3世紀伊豆で作られた枯野(軽野)という名の巨大古代船の名を後世に残せないものか、と自ら歌に詠んでいる。(日本書紀 応神天皇5年10月)。 伊豆市には狩野という地名も残っておりその中に軽野神社という名残も残す。
伊豆の巨木で作られた10丈もの古代船が狩野川を渡って関西に出航されたのかもしれない。





横瀬八幡神社 静岡県伊豆市修善寺307
仲良くなのか威嚇なのか向かい合う狛犬




天城神社 静岡県伊豆市湯ヶ島305
横目でチラ見する一方、その目をそらすもう一方の狛犬




ロマネスクは10〜12世紀のヨーロッパ中世建築美術様式。
まだ人体解剖学も遠近法も発明されてない時代の具象装飾。
伊豆市の狛犬はそんなロマネスク時代の素朴でユーモラスな
雰囲気を彷彿とさせる




磔刑のキリストも周りの人物も楽しそうな浮遊感はシャガール風




もし日本ロマネスク美術館ができたら、そこに伊豆市の狛犬たちが間違って展示されても、違和感がない。





ところで横瀬八幡神社境内には昭和39年ごろから数年前まで鳥居の前に”オリンピヤ記念”という謎の石碑が建っていた。修善寺の神社になぜこの碑があったのだろうか。
オリンピアは、1989年にユネスコの世界遺産に登録されたギリシャの都市で、ゼウス神に捧げた祭典オリンピック競技発祥の地だ。半世紀前に、この伊豆市で東京オリンピック自転車競技開催地になることを予言していたのだろうか。それとも熱海-東京間の記念特急運行の宣伝だったのだろうか。碑はすでに撤去され今では覚える人もいないだろう。

狛犬たちが護っていたのは古代ギリシャや中世ヨーロッパにも通じる伊豆の異次元空間だった。




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